逆境

レイカの一言を機に、魔王による空想世界支配が本格的に始動する。
その支配は、魔界住民のみならず仲間である悪魔達にも強いられていた。
空気が変わってしまった魔王城にて、ユサは思いを巡らせる。

―――

一人、屋敷のお掃除をしているユサ。
屋敷の外をほうきで掃いていて、ふと見上げるとユサの背中越し(斜め下の構図)から魔王城が見える。

悪魔達に科した命
・絶対服従
・従わない場合は相応の処罰を下す(最悪消失させる)
・悪魔としての自覚を持って行動せよ

悪魔は誰もいなくなっていないが、魔界住民は何人か失踪したとの噂を聞いた。
そして、仲間である悪魔達にも冷たくあしらい、処罰を下すほどに、魔王は冷徹なのだと。

「かつての魔王とは変わってしまった」「今は魔王が怖い」と思うようになった。
魔王の顔と、秋良の顔を思い浮かべて。

(仕方のない事です。魔王様は、空想世界を支配するためにいらっしゃるのですから。)
(私は、それをお支えするだけ。)

ティーカップのお茶の水面に、不安そうなユサの顔が映る。
その顔が、ゆらゆらっと揺れて、後ろから秋良の声が聞こえる。
気付かなかったのでユサは思い切りびくっと驚いて立ち上がり、秋良の方へ振り返る。

ユサは本当に申し訳なさそうに謝るので、秋良は少し気になったといった様子でユサを見る。
疲労がたまっているのでは、と気遣ってくれる秋良にユサはほんの少し安心する。
(こうやって声をかけてくださるのだから、大丈夫。決して人が変わってしまったのではない。)
(この先も…。)

ここから長い長い、時間が経っていく…。

魔界を中心に、空想世界は闇の力によって支配を強めていく。
のだが、敵(光を操る強者)がいないため、闇の力による支配は強まりすぎた。
光と闇を均衡に保っていた世界は闇へと大きく傾き、各地に闇に支配された獣などの住民が出現するようになった。

それは、空想世界を崩壊へと導く、異変の始まりだった。