未題

(※ここから空想世界ストーリー軸と並行。)

「元気がない気がするぅ~~~?」

「……私の、勘違いならいいんです。」

昼間の屋敷。掃除をする手を止めて、ユサは床を見つめる。
ユサは、レイカに言うべきか言わないべきか悩んで、そして打ち明けた。
彼女は「そっかなあ?」などと適当な事を言って、自分がはぐらかされるのだと思っていたが。

「ユサっちがそんな顔してたら、誰が見たって元気無くなっちゃうよ!ほら!」

その一言に気付かされて、笑顔を取り戻すユサ。
そうだ。自分が元気を無くしてはいけない。秋良様を……、魔王様を、お支えする身として、当然のことだ。

気を取り直して屋敷の中を掃除するユサ。レイカがちょっかいを出しに来て、とがめているうちに、普段は入らない物置へと入ってしまうレイカ。
「入っていいと言われてませんよ!」「入っちゃダメとは言われてないもん!ちょっとだけ!ちょっとだけ!ねっ?」

と言って、少し埃をかぶった部屋の奥へ行ってしまうレイカ。ユサは、埃というものを初めて見た。不思議な光景におっかなびっくり目を奪われつつ、周りの物に気が取られる。

そこで、ペンダントを見つける。中には、見知らぬ女の姿が映っており……。後ろからひょい、と手で引っ掛けられてレイカに取られる。
慌てふためくユサだがレイカは一向にペンダントを返す気が無く、そのまま服の中へ仕舞ってしまう。ユサに「元に戻すべきだ」ととがめられるが。「もう忘れ去られているみたいだよ」「わざわざ綺麗にする必要ないよ」と言って出て行ってしまう。

廊下を歩きながらピコーン!と思い付いて、「あれさ!やっぱり大事だからあんな風に人間を閉じ込めておいたんじゃない?」「そ、そうなんでしょうか…。あの、あれは写真ですよ」
写真を知らないレイカかもしれない。ユサは知ってそうかも。前にマスターが秘蔵の物を写真で見せてくれたとか、そういう。

「そういうの、婚約者(コンヤクシャ)!って言うんだよ!」「コンヤクシャ?」
(魔女達の間で言われていた文化が悪魔達の中にも知識として入り込んだ。行商人曰く、火の島にもすでにそれに似通った風習があり、むこうでも当たりの前の事なのだという)

「まおーちゃんが元気ないのも、この婚約者が忘れられないからだよ!」「そ、そんなわけ…!」
「わかんないよお。だって、まおーちゃんがまおーになる前の、むかしばなしとか、おしえてくれないしぃ」
「……そうですけど」

「ほら決まり!早速探しに行こう!」「えっ、あ、あの!レイカさん~~~!?」