立会

太陽が真上に登り、傾き始めた夕方。
屋敷の入り口に現れたのは、黒い地にオレンジの模様が付いた服を着た青年だった。
突然の来客を出迎えるために階段を降りてきた、羽の付いた悪魔はその青年の姿を見て驚いた。
そして、悪魔が何かを言おうとする前に、青年が話しかけてくる。

「初めまして。ここが魔王の屋敷で合っているかな?」
「は、はい」
「そうか。良かった。……挨拶が遅れてすまない。僕は、秋良だ。魔王から、この屋敷の管理を任された者だ」
「……あの、あなたは……」

彼の口から出てくる言葉は、たしかにこの青年の事を述べているのに。悪魔は訳が分からず、戸惑いの顔を向けてしまう。
だが、青年はすかさず悪魔に近づき、その耳元に、優しい声でそっと囁く。

「僕は魔王の手となり足となり、秘密裏に動いているんだ。活動の阻害はしないで欲しい。だから……、僕についても何も聞かないように」
「あ、あ」
「いいね?」

そう言って玄関を抜け、部屋に入っていく秋良。

「はい…!」

秋良は、戸惑う悪魔の様子に気が付かないフリをして、部屋へ入ったのだが…。
玄関の方を向いたまま立ち尽くす悪魔の顔がほんのりと赤く染まっていた事には、誰も気が付かなかった。