伏線

過去の君と魔王の記憶

僕は、■■■■のいた世界から、君のいる空想世界に連れてこられた。
その時の僕は幼い少年で、元々弱い体だったから自力では立てないほどだったけれど、
連れてこられた際に、君の大いなる力で立てるようにしてもらったんだ。

花畑で読書をする秋良。
そこに創造神が飛び回っている。
しばしば自分の真上を飛ぶのだが、気にしないフリをしている。

創造神が話しかけてくる(いつの間に降りて来た感じで)。
「なによんでるの?」
「…空想世界生物全集」
「へえ~。あっそれわたしがかんがえたどうぶつだ!これも。これも!!」指差しながら
「……」無言で別の本に変える
「こんどはちがうほんだねっ。え~とこれはあ~」
「歴史の本。空想世界創世記」
「えへへ~。このせかいはね、ぜんぶわたしがつくったんだ!」

「…」本を閉じ、体を倒して寝る
上着を頭にかけてしまったので めくってくる創造神の目が見える

「あきらはほんがすきだね」
「…嫌いだよ」
「えっ?まいにちよんでたのに」 ここでかけてあった上着を剥いでくる創造神
「今嫌いになったんだ。……もう読みたくない」
「ん~。そう。あきらはほんがきらいなこなんだね」
「……」

君は空想世界の創造神。
僕が好きだと思うものは、全て君が生み出した作り物。
僕が興味を持って集めた知識も、体験も、全て、元を辿れば君に繋がってしまう。
そのことに気付いたとき、とても嫌な気持ちになった。
ここまで繋がってしまっているから、「あきらもわたしがつくったんだよ」なんて君が自慢しなくても、僕は君から逃げられないことが分かっていたよ。
だから、僕は君を無視していたんだと思う。

ある日、花畑に創造神がやってくる
昼寝をしている秋良を他所に、うーんうーんと唸り、(たぶん盆地かなにかを作りたかったか、その土地に集落があるのが気に食わなかったか)
天使の大群を呼び寄せて、花畑付近にあった集落を燃やし尽くしてしまう
火が花畑にも燃え移り、秋良が目覚めた頃には花畑はなく、火の海になってしまっていた

「……」
何も言えずに、立ち尽くす秋良に、創造神が上から声をかける
「あきら~。そこにいるともえちゃうよ~~」
「にげないの?ね?」
真っ直ぐ虚空を見つめる秋良を見て
「あっ」
「もしかしてあのいえのじゅうみんとともだちだった?ごめんね」ここで降りてくる あきらの手を掴んで
「だいじょうぶだよ」
「わたし、またつくりなおすから。もっといいのにつくりなおすから」
「あきらがきにいってくれるようにーー」
創造神は創造神で反省しているような様子だが…

君の事を、「すこし力があって強引で無邪気な女の子」だと思っていた。
けど、燃えていく花畑を見て、君を見て。
“君がこの世界に与えてくれた言葉では形容できないほどのおぞましさ”を抱き、
「君の力が、空想世界を脅かすこと」を恐れるようになった。