受難

火の神との記憶

*秋良の設定
魔王は、空想世界を支配し事実上の最高権力者になった。
しかし、創造神に「あきらはあきらだよ」と言われてしまい、あの時役目を終えて消えたはずの秋良は、
空想世界に存在し続けることになってしまう。
秋良自身も”魔王に生まれ変わった(魔王の役(力)を手に入れた)のに、秋良(何もできない役)を押し付けられてしまったこと”を悩んでいた。
この話には、ある方法で体を成長させた秋良が登場。

*守護神の設定
空想世界の大天使の生まれ変わり。創造神がいなくなったので、代わりに空想世界を守護する役割を担う。
土の神、火の神、水の神がいる。世界や住民を守るだけで、住民を作り出す力はない。

*火の神 ヒナの設定
空想世界の火の神。中央に大きな火山がある島、通称「火の島」を守護しながら、住民達と共に住み始める。
ヒナは大天使の頃の記憶を保持している。

***

場所は火の島。
大天使が守護神に生まれ変わり、守護神を空想世界の各世界に配属する時の話。

魔王から守護神へ状況説明というか守護するよう命令を出し終える。
土の神と水の神にはそれぞれの世界へ向かうよう言い、残った火の神を引き止めた魔王は話を切り出す。

「話がある」
マントが影になって消えていき、
「火の神、僕に戦い方を教えてくれ」
頭を地に付けて懇願する秋良の姿があった。
「……驚いた。あの時のウチュウ小僧か」

「なんだい、その名前は」顔だけ上げて、しかめる秋良
「自分から言っておったろぅ?『ウチュウからやって来た』と」
「…僕は”その記憶”を忘れてしまったよ。君は大天使の時の記憶があるんだね」
「一応じゃがな。ふむ、にしてもじゃ」
「最後に会ったのは…あの花畑が燃える前であったか…。こうして見ない間に随分と背が伸びたのう」どこか懐かしそうにまじまじと見るヒナ
「…そうだね」表情は曇っている
「ん、ではウチュウ小僧よ。わしに戦い方を教えて欲しいと言っておったが…」
「その願いは無理じゃ」

「わしがお前の願いを聞いて何になる。そもそもお前は、火の島とも、守護神であるわしとも、何の繋がりもないじゃろう」
「………」
「頭を上げよ」頭はあげるけど、手は地についたままの秋良
「ふうむ…教えないと言っておるのではない、知恵を絞れと言っておるのじゃ」

立ち上がった秋良に影がまとわつく。黒いマントを羽織ったそれは口を開く。

”火の神ヒナ、魔王の命に従え。秋良を君の弟子に任命する”

「良かろう。その願い、聞き受けた」目を閉じて答えるヒナ

「…全く煩わしいやつじゃ」どうしようもないといった顔で微かに笑った