受難

火の島住民の住居が立ち並ぶ集落のそばで、石を積み上げてできた炉を囲んで石に座るヒナと秋良。
燃えやすい枯れ草を集めた箇所に、ヒナはさっと火を付ける。

「よいか、火とは”放つこと”じゃ。己の中に煮えたぎる熱い意思を感情と共に身に任せ、外に出す。他に大きな影響を与えることは、どの属性にも言えることじゃが、火の扱いは最も単純で歯止めが効かぬ。故に難しいと感じる稀なやつもおるのじゃが……」

ドンッ。何かにぶつかり視線を下ろす秋良。
石、つまり火の島住民がヒナを目当てに足元にひしめきあっていた。

「おっと、すまない。移動しようか」

自身は脇に逸れて、ヒナの近くに通す秋良。

「ぶつかられ、怒りもせず退いたか…”温厚”じゃのう……」

「そこの者!場所を譲り受けた礼を言うのじゃ」
「ゾイヅダレダ」「ダレダダレダ」
「今日からわしの弟子になった者じゃ。火の扱いはまだじゃがのう……」
シーン
(新入りを認めない顔というのか まだ無表情)
「おぉ、この小僧はウチュウから来たウチュウコゾウなのじゃ」ポン!と手を打つようにひらめいた顔で(悪巧みでは)
「ウヂュウゴゾウ!」「ウヂュウ!ウヂュウ!」「ガンジャガンジャ!!」
「あのね…勝手に広めるかな……」
「これも力を扱う上で必要なことじゃ。にしても爆発テキ人気じゃのう、ウチュウコゾウ」

火の島を神殿の上から見るヒナと秋良
火の島住民のそばで生活しているため飾りばかりの神殿にはなかなか上がることがないことをぼやきつつ、各地から立ち上る火柱を見かける
火の島には大小様々な石達と、山の向こうにひっそりと住む獣達がいることと、身を寄せ合い守護神に頼って生きていることを知る(弱いものは世界との繋がりを無くし問答無用に消えてしまう)

夕日を眺め、自然や住民達の暮らしぶりを知った秋良
翌日には、秋良に火の使い方を伝授することになるのだが……

特殊な鉱石が埋まった石柱の前で火の使い方を伝授するヒナ

「ま……一日居着いた程度じゃ。大したもんは出んがろうがのぅ」

恐る恐る言われた通りに手を前に出す秋良
秋良の手のひらにほんの小さなオレンジ色の火が灯る

「何とか出来たようじゃの」

「蝋燭を灯す程度の僅かな灯火じゃが、ここで暮らしていく分には十分な力じゃろう」

驚いてヒナを見る秋良に、ここぞとばかりに強い口調で言ってやるヒナ

「魔王などやめてしまえ」

ヒナは、秋良が火の島に住めるよう黙って下準備をしていたのだった
(秋良には扱えないほどの強さを誇る闇の力が、軽減されるよう仕組ませてもらった、ともいう)
望まないことをされ、不服な秋良にヒナは「魔王の器ではない」とはっきりと言い放つ
(そして、女神を見逃したことを「決断すべき未来を先伸ばしにした」と批判する)

「その程度の覚悟で何ができる」

「それにじゃ。弱き住民の、個の立場から考えれば容易に分かるであろう。生にしがみつき苦しみながら終わりを待つという事が、どんなに愚かなことか…」
「住民達が消えていく中、世界はこの流れに乗ったまま安泰に、消え行く運命を受け入れるべきじゃ」

そう言ったヒナに、秋良は反抗する

(ここでやめたら、意味がないんだ)

そばに突き刺さっていた石の剣を黙って抜く秋良
その背中には影が降り、黒い衣を纏った秋良の周りに紫色の煙が立ち込めた後、とうとう紫色の炎を剣の根本から勢いよく噴出して、言った

「もう、後戻りは出来ないところまで、染まってしまったからね」

「生ぬるい気で空の頂点に上り詰めこの世を統べようなどとぬかす者など、こっちから願い下げじゃ」

「あの土いじりババアではないが……柔い意思の、芽がでぬ前に、摘み取ってしまうかのオッ!」

「覚悟を見せェェイ!」

互いに真っ向から突っ込んで行った魔王とヒナ
大きな衝撃と火の熱量が空間を包み、拡散していく。

石柱を真っ二つに切って、火の島上空へ飛んでいく魔王。

「ち!」

逃げられ舌打ちをしたヒナは追撃の炎を放出するも、黒い影は揺らめき飛んで、宙に渦を巻いて飛び込むように消えた。

「あんんんんのッ!アホだらコゾウめッ!!」

腹の底から発した叫び声は放たれた途端空間にずしりと重みがかかった。

「1日かけ、わざわざ用意してやった”無名の一住民に戻ることのできる唯一の選択肢”を切り捨てた挙げ句、あろうことか!戦闘中、わしに背を向け逃げるとはぁぁ………ッ!!」
「そぉれでも男かーーーッ!!」

地鳴りがし、宙には渦巻くように長く伸びる火の粉が次々とほとばしる。段々と勢いを増すそれに包まれ……。
手を広げて体全体で大きな一呼吸をして、辺りの火を吸い込み、静かに目を閉じるヒナ。

「いかん…また島ごと噴火させるとこじゃった……」
「まっ…たく……ああいう手の焼ける者を力で頷かせようとすると、つい、かっかしてしまうの……んむ、守護神たる者、後追いすることなかれ。わしはムカンシンぐらいが丁度いいのじゃ」

誰に聞かせるでもなく独り言をごち、高くそびえる山を見上げて気を持ち直したヒナ

すぐさま火の島住民が駆けつけて「マオウガデダ」「マオウバドゴダ」と騒がれ囲まれるヒナだったが、遠く彼方に行ってしまった空の方を見てため息混じりにお節介をかけるのであった

「この先本当に後戻りは出来ぬ、光なき道じゃぞ よく、覚悟しておくのじゃ……」