思案

魔界の悪魔達が魔王の事をまおーちゃん、と呼ぶようになってしまった(ここあとでつじつま合わせ)
まおーちゃん、と言い出した発端はレイカだった。
秋良は『魔王は空想世界の支配者』であり、最高権力者であると考えているので、
これではいけないと思い直し、レイカに再教育をする。

「なーにこれぇ?」
「レイカ、この書物を読んでごらん」

「これは、魔王に纏わる言い伝えが記された書物だ。詳しくは、この83ページに書いてある」

魔王に纏わる言い伝えが記された書物を手に取るレイカ。顔を近づけて凝視する。

「じぃ~~~~っ」

「あくまだから、よめませ~~ん!」
「……仕方がないな。他に読むことのできる者はいないから、僕が音読しよう」

レイカの隣の席に座り直し、読み聞かせる秋良。
嬉しそうなレイカ。

全て聞き終わって、レイカは顔を歪めた。

「ふむふむ?つまり、あきらちゃんは『まおーちゃん、なんて呼ばれるまおーは魔王らしくない!』って、いーたいの?」
「そうだよ」
「んん~…でもでもっ、”レイカの魔王”は”たった一人”だよねぇ?」

「別によくない?他の魔王と比べなくても~~」

「他の……」
「んっ?どったの?」
「………何でもない」

困ってるのかと勘違いしたレイカ
秋良の肩をぽすぽすと叩く。

「まおーちゃんはあ、生まれながらにして立派なまおーちゃんで!レイカ達のまおーちゃん!そこは自信持っていーよ☆」
「……そうだね。ところでレイカ。今度、君に読み書きを教えよう。今は良くても今後苦労する」
「えーっ、いいよそんな。ひつよーないしぃ」
「ユサちゃんに言われたままでいいのかい?」
「む。それはちょっとヤダ」
「では、練習日は次の休みに……」

失態だった。
他の魔王の存在に気付かせてしまった。

書物の中に登場した魔王は架空の人物だと、理解してくれていればいいが……。
かつて空想世界に他の魔王が存在していた事、その魔王が途中で入れ替わった事、それだけは絶対に気付かれてはいけない。
でなければ、『僕が偽りの魔王』だということがばれてしまう。

これ以上言わない方がいいと思案した秋良だった。