「もおおおおおおぉまた言われたっ!!!」
屋敷の広間に飛び込んできたレイカは、開口一番そう叫んだ。
そして、ユサを見つけると、真っ先に床を蹴って飛びかかった。
「ねえ聞いてよユサっち!こないだ喧嘩吹っ掛けてきたお堅い魔女達が『よちよちベビーがたくさんで大変ねぇ?あんた達の”まおーちゃん”。まるで子守りのパパだぁ!アッハハハァ!!』って!!!!」
「レイカさん!?あれほど喧嘩はお止めくださいとお伝えしたのに…またですか!!」
「だってだって!意地悪言う方が悪いじゃんー!!」
「どうしたんだい?」
「あっ、秋良様」
「また口論をしてきたんだね。レイカ」
「ぶー!今回はいっぽーてきに言われただけだもん!!」
「…うん?」
「何も言い返さず、帰って来られたのですか……?」
「そ。ベビーじゃないからもうわーわーしないもん!」
そう言ってそっぽを向くレイカを見て、驚く秋良とユサ。
レイカはチラ、と秋良の顔を見てこぼす。
「けど、」
「レイカ達のめんどー見てくれてるの、ジジツじゃん?」
「『パパ』、っていうの。悪くないな~~……」
「なんてね!」
秋良達に背を見せ、一歩前に出るレイカ。
「……血は!繋がってない、けど…良くない?なんかそういうの」
えへへっと笑い声を漏らすレイカ。釣られてユサも微笑む。
その様子を見て、
「………僕は、」
『違う』と言いかけた口を閉じた。
それを言ってしまったら……。いずれ僕は、魔界の、空想世界の部外者として追放されるのだ。本当の魔王と一番関係のない僕が、口を挟んではいけない。
だが、肯定してしまえば、僕との唯一の繋がりを大事に想ってくれた彼女達が真実を知った時……余計に苦しませることになる。
ならば。
苦しませる前に、完璧に服従させなければ。
「魔王様…?」
影を纏った青年が、手をかざす。
紫色の、闇に焦がされた炎を灯し、そして宣言する。
「僕は、」
「”好きじゃないな。そういう繋がり”」