激しくドアを叩く音がする。
お客さんが来たときのベルは鳴らなかった事に疑問を感じつつ、気配を察していると「いい。奥に行け」と言われてしまったgate。
直人が、玄関まで進むと扉も開けずに受話器を取り、その場で話し始めた。
ガチャン。受話器を置く音が聞こえて、恐る恐る廊下を歩き、部屋の扉から顔を覗くgate。
「あの。直人さん」
「……何だ。さっきの客なら追い返した」
「受けないのですか?」
「いい」
二人で道具の手入れをしながら、話し出す直人。
「あいつは昔、大道芸をしていたんだがな。辞めて死神になったらしい」
「そん時に使っていた操り人形を、今の死神業にも使っているらしい。一度派手に壊して持ってきた事がある。もっと自由に手足が細かく動かせるよう直せだの似たようなものを数十体持ってきてこれと同じように直してくれだの細々注文して、大金を積まれた」
「私が直したものは、やがて命が宿ると言われている。お前さんみたいに体が動いて、心が動いて、気付いたら持ち主になついちまう」
「同じ商売道具なのにな。あんな使い方、許せねぇ」
はあーっ、と大きく長い息をついて、再び布巾を取る直人。
「世界が全て繋がりゃあいいってもんじゃねぇ。物をこれでもかと利用して生きていく人間が大半だが、少ない物だけで人様に迷惑をかけないよーに好きな事をやって、そおっと生きてく人間もいるんだ。私はその一人。本当に必要とする者だけが、辿り着けばいいってことだな」
(でも、何度もやって来るあの死神も、直人さんの直しを必要としているのでは。そう思ったgate)