沈痛

※これは空想でもやる

涼春との会話その3か4、5
涼春との会話中に、記憶が無くなっている涼春に詰め寄る話
たぶん、帰ってきた後、数日経って落ち着いた頃に話しているんだと思う

 

僕の知らない世界の事を楽しそうに話してくれる。
気持ちの整理になるだろうし、癒し…と言ったら気持ち悪がられるだろうけれど、ハルくんとの会話は僕にとって心地の良いものであった。

「へえ。名付けの際に親の名前を取るんだね」
「おう。オレの周りにはそういうやつ、結構居るんだけどなー。
で、オレは母親の名前から一文字もらって………」

突然口が止まる涼春

「どうしたんだい?話に夢中で、疲れさせてしまったかな」

そう秋良が気を遣って声をかけたが、返事がない

「……えと…………なまえ」
「………思い、出せねえ……」

(時が静止したような感覚、秋良の声色に落ち着きがなくなる)

「君の……父親の名前は、何て言うのかい?」

「…ちちおや……?いたっけ、そんなやつ…」

「……知人は。友人はっ。飼っていた動物の名前は!」

「え……あ…?」

「オレ……。全部、忘れちまった、みたい…だ……」

!!
あまりの衝撃に、勢いよく立ち上がる秋良
落ち着きがない行動に、涼春は翻弄され、肩を強く掴まれる。

「あ、あき」痛いと言おうとして、遮られる
「忘れてしまっては…いけないんだ…!!」
「君を覚えていて、帰りを待っていてくれる人達がたくさんいるんだ!」
「君には、まだっ!帰る世界が、あるだろう!!!」

揺さぶられて、動揺してしまっている涼春

「……あ、あぁ」驚いてるけど分かったって感じの顔
「………。すまない、…少し頭を冷やそうか」

「本当にすまなかった…」
「いい。もう謝んな。お前のおかげで、忘れたんだ…って気が付けたんだ」

「君も落ち着いた方がいい。今夜は僕の部屋で寝よう」
「……う。いや、いい」
「本当にいいのかい。…彼女には、言わない方がいい事は分かっているだろう?」
「ううっ。……てか、お前となんか寝れるか。余計落ち着かねーよ」
「そういう方法もあるという事を提案してみただけさ。…もちろん、知っているよ」

ここ、涼春にノートを渡しそう
大切な事を、忘れてしまっても。取っておけるように、って。

「僕は君の事、一生忘れないよ。だから、安心して眠るんだ」
「…」
「おやすみ。ハルくん」