帰還してすぐの秋良の話

帰還してすぐの秋良の話 5

もう一人の僕との奇妙な体験をした数日後。僕は改めてカントクのスタジオにやってきた。結局、昨日はカントクとその奥さん(えっと……名前は、オクサンと言っていたな)の言い争いでまだ何をやるのか聞けずじまいだったためだ。というか。二人とも名前そのま…

帰還してすぐの秋良の話 4

(…………あ………)(……………あ……ぁ……)声が、聞こえる。どこから。聞こえて、くるんだろうか……?意識がはっきりと戻ってきたとき、僕は壁も床もない真っ白な世界に立っていた。そこはたしかに白いはずだが……。注がれる光も照明も何もないのにぼ…

帰還してすぐの秋良の話 A

3の前後に入る、ユサに「今は断らせてほしい」の手前には確実に入ると思う。●劇の登場人物闇の王闇の騎士闇の令嬢光の少年光の神ミラクルボックス念じることで起動する(カントク曰く)即席の世界を作り出す事のできる装置?らしい?(女神曰く)世界の入り…

帰還してすぐの秋良の話 3

「ってことがあってだなぁ!問題大アリだろ!!どう考えても。まだ体が定着したばかりで新しい意志が出来上がってないのを考慮してもさ。身振り構わず"オレに寄り掛かってくる"なんて、以前のあいつと比べたら明らかにおかしいだろ……」「まだ、君しか頼れ…

帰還してすぐの秋良の話 2

老人カントクの出会いから幾日か経ったある日。空想世界管理局での一日の仕事を終えた秋良。早々に身支度も終えて、管理室の入り口から外へと続く白い通路へ出たところで、足を止めた。「あき……、えっと、お疲れ様です…!」「お疲れ様」同じく管理局で働い…

帰還してすぐの秋良の話 1

春間近のあたたかな陽気が降り注ぐ空想世界。その世界の片隅でボーッとしている青年、秋良がいた。秋良は、人通りは少ないが手入れの行き届いた白い街の中の、これまた白色の洒落たベンチに座っていた。紙に包まれた手元のパンを見ても、まずまずといった裕福…