妄想世界 本編

11* 天獄

黒い壁がどこまでも広がり、ハートの切れ端が散っている白い地平線。屋上を抜けた先の狭い亜空間に、顔に白紙を貼り付けた魔王がいた。白いスポットライトに当てられて、ゆるいカーブを描いたソファーにずぶずぶとうずもれている。その周りを囲むように、愛し…

9* 体育館(未完)

気が付いたら、僕は屋内の壁に寄り掛かっていた。ここはどこだ…?薄暗いために時間もまるで分からない。壁沿いの狭い通路を移動し、うっすらと光が漏れる先へと向かう。白紙の生徒がずらりと椅子に座っていた。この光景は……。体育館全体に、生徒会役員選挙…

8* 夕雨の先輩後輩

 「佐ヶ浦先輩、入っていってください」薄暗く閑散とした校舎入口、愛しい後輩の手で掲げられた傘を見て、僕は立ち尽くしていた。下校のピークが過ぎ、普段よりは早く終えられた生徒会で晴れ晴れとしていたのだが…。外はあいにくの雨だった。いや…

7* 保健室

昼休みに入ってすぐ。どこから聞こえてくるのか、教室内にアナウンスの音楽が流れる。チャイムも鳴らないこの学校にも、こんなハイテクなものがあったのか?ひとまずの役目を終えた机の上の教科書を片付ける手を止め、その珍しい機械的な放送に聞き入っていた…

5* 反省室

 「入れ」そこは照明の付いていない、薄暗い教室だった。四面の壁の天辺が見えないほどに高く積み上げられた机や椅子。その雑然と積み上げられた机と椅子の壁の他に、学習道具や掲載物などの物の類いは一つもない。ただ、部屋の中央に一式の机と椅…

4* 廊下

白紙の生徒先生が校内を行き交う昼休み。僕は彼を迎えに2年K組、ハル君の教室へと向かった。もちろん、昼御飯を共にするためだが…。驚くべきことに、今日は所持していたバッグの中に、食料が入っていたのだ。色とりどりの食料が詰め込まれた容器、その蓋に…

3* 放課後

 まただ。昨日の記憶はある。が、校門をくぐってからの記憶が、曖昧になっている。夢だったかのような。頭を捻っても、詳細は分からず、ぼんやりと霧散してしまう。(この世界は、僕のいた世界よりも時間の流れが不規則なのかもしれないな。)僕は…

2* 3年K組

 菓子を食べたような、甘ったるい感覚。暖かな日差しに包まれ、気分はまんざらでもない。夢のような跡に残るのは。虚像。目が覚めた時には知らない部屋にいた。誰もいない密室は、壁も天井も窓の外も白くて、同じ形の木の板と鉄を打ち付けた机と椅…